日々のあはい

貧乏人、本を読んで暮らす

帰省日和 / 『夜消える』読了 / 『陰摩羅鬼の瑕』を読みはじめてしまった

10月23日(月)

5:50。朝を迎えたばかりの空は、柔らかな水色と、薄紫色、桜色のグラデーションが美しい。少しづつ明るさを増して青が濃くなっていくのを時折、窓の外に眺めながら、実家へ行くための身支度をのんびりと整えた。

オリーブオイル・コンソメ・塩胡椒を混ぜたごはんに卵を乗せる

この日は1日中、雲ひとつない見事な秋晴れで、電車の窓から見渡す紺碧の海の美しさや、建物の少ない田舎町の高く広くどこまでも続く蒼穹、山は遠く川の向こうの裾野から、雪を薄っすら被った稜線までくっきりとよく見えた。自然の他に何があるわけでもない町であるが、こんな日和の秋に訪れると「だがそれがいい」と思えてくる。素晴らしい帰省日和。

駅まで迎えに来てくれた母と共に地元のスーパーに立ち寄って、地元の新米を使った幕の内弁当を購入、実家で父と三人、秋の味覚を楽しんだ。父は足腰があまり動かずベッドの上で生活している。肝臓の病気をしたせいでやせ細ってもおり、ゆっくりと、限られた動きしかとれないのだが、食欲は驚くほどあって、美味しいと言ってお弁当を全部平らげた。週1で通っているデイサービスでも、お昼ごはんの時間を楽しみにしているらしい。

介護施設へは最初は行きたくないと言っていたらしいのだが、上手くやれているようでひと安心だ。担当の方のことを、「太山くん(仮)は若いのにすごい」と頻りに褒めたり茶化したりしていた。実際、父は痩せたとはいえ元の体格がよく、今も3Lサイズの服を着ているくらいなので、本当によく面倒を見てくれていると思う。直接お礼をしたいので来月はデイサービスの日を狙って帰省したい。

新しいラジオが欲しいと父が言うので、ケーズデンキやショッピングモールまでひとり買物に出かけた。久しぶりのドライブだ。帰省日和はもちろんドライブ日和でもある。陽射しが強かったので、窓を全開にして走ると冷たい秋風が気持ちよかった。車のない生活にもすっかり慣れてしまったが、元々はドライブが趣味のひとつで、車と一緒にどこへでも(片道4時間くらいなら日帰りでひょいひょいと)飛び出したものだった。

ラジオは軽量で長時間使える物を選んでみたが、ラジオの良し悪しなど自分に分かるわけがない。父に渡したらとりあえずちゃんと使えていたので、いいということにする。ラジオといえば高校時代はラジオを聴くのが好きだった。やはり実家にいると昔のことをたくさん思い出す。この日、甦るのは明るい記憶ばかりだったと思う。先月は逆だったので、つらかった。毎月こうだったらいいが、きっとこの先も楽しい思い出と苦しい思い出が交互にやってくるのだろう。人生だなあ。

3時のおやつに舟和のあんみつを食べたあと、また駅まで送ってもらい、4時半の電車に乗った。本を読むつもりでいたのだが、結局ほとんど窓の外を眺めていた。ちょうど日没の時間だったからだ。火の塊のような太陽が、少しずつ、静かに、海に溶けていく。雲の影も色を濃くし、最後には闇と区別がつかなくなる。そんな昼と夜のあわいを飽きもせずに見つめていた。

家でごはんをつくるのも面倒になり、モスバーガーで月見フォカッチャを注文した。

卵の位置がおもろいことになってる月見フォカッチャ

初フォカッチャ美味しかった。コーヒーおかわり100円なのをいいことに無駄に長居をして、読書をしたり週末のことを考えたり、だらだらまったりと過ごす。外に出ると、月が照っていた。実家のある町よりはずっと都会だが我が街もたいがい田舎なので、夜も20時を回ると歩く人はほとんどいない(場所にもよる)。『月を見ていた』などを鼻歌でふんふん歌いながら帰り道を辿った。日中の陽射しが嘘のような冬の夜の冷たさだったが、気持ちはぽかぽかしていた。

帰宅をしたら21時になっていた。休日だが映画を観る時間どころかごはんを炊いて冷凍する時間もない。荷解きをしてすぐにベッドへ

久しぶりだな!この重量感。うはははは。

ベッドへ行くつもりが、開いちまったな……軽率に……。

写真は実家の自室から回収してきた4冊である。永岡政宗の下巻と『陰摩羅鬼の瑕』は、なぜか自室の本棚ではなく居間に眠っていた。ずっと探していたので小躍りしながら持ち帰った。理由が思い出せないのだが、このシリーズは『塗仏の宴』までしか読めていない。まあそのうち読むやろ、と放置し続けていたら本を読むことすらなくなってしまって、今に至る。『魍魎の匣』はシリーズで(今のところ)いちばん好きな作品。帯に探偵が踊る『百鬼徒然袋 ー 風』はもはや買ったことすら覚えておらず、当然まだ読んでいない。我慢できなくて『陰摩羅鬼の瑕』のページを捲ってしまったので、少しずつにはなる(職場に持っていくには重すぎる)のだが、読もうと思う。

こちらはモスで読了。長くなってしまったので、感想らしきものはまた後日。

そんなわけで、穏やかだが盛りだくさんの1日だった。うはははは。